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エンゲージメントとは何か?意味・モチベーションや従業員満足度との違いをわかりやすく解説

企業や人材マネジメントについて調べていると、「従業員エンゲージメントを高める」「エンゲージメントの高い組織をつくる」といった表現を目にすることがあります。近年では人事施策や組織開発の重要な指標として扱われることも増えています。

しかし、「エンゲージメントが高い」とは、具体的にどのような状態なのでしょうか。仕事へのやる気が高いことなのでしょうか。それとも、会社が好きであること、職場に満足していることなのでしょうか。

実際には、「エンゲージメント」という言葉は、研究領域や企業によって必ずしも同じ意味で使われていません。仕事そのものに対する活力や没頭を扱う「ワーク・エンゲイジメント」と、企業と従業員との関係性を広く表現するビジネス上の「従業員エンゲージメント」では、意味する範囲が異なります。

この記事では、エンゲージメントとは何かという基本から、モチベーションや従業員満足度、組織コミットメントとの違い、ワーク・エンゲイジメントの考え方、そして仕事や組織の環境との関係まで整理していきます。

 

エンゲージメントとは何か

エンゲージメント(engagement)は、英語では「関与」「参加」「約束」など幅広い意味を持つ言葉です。仕事や組織について使われる場合には、人が仕事や組織にどの程度積極的に関わっているのかを表す概念として用いられています。

ただし、ここで注意したいのは、「エンゲージメント」という一つの統一された心理学的概念が存在するわけではないことです。研究分野では仕事への心理状態を表す「ワーク・エンゲイジメント」が研究されている一方、企業実務では「従業員エンゲージメント」という言葉が、会社への信頼、仕事への意欲、組織への貢献意識などを含む広い意味で使われることがあります。

そのため、企業が「エンゲージメントを測定しています」と説明していても、実際に何を測っているのかは調査によって異なります。仕事への活力を測っている場合もあれば、上司への信頼、企業理念への共感、職場への満足、継続勤務の意向などを含めている場合もあります。

エンゲージメントについて考えるときには、言葉だけを見るのではなく、「何との関係について、どのような状態を指しているのか」を確認することが重要です。

 

ワーク・エンゲイジメントとは何か

学術研究で広く使われている概念の一つが「ワーク・エンゲイジメント(work engagement)」です。ウィルマー・シャウフェリらは、ワーク・エンゲイジメントを仕事に関連する肯定的で充実した心理状態として捉え、「活力」「熱意」「没頭」という三つの特徴から説明しています。

「活力(vigor)」とは、仕事をしているときに高い水準のエネルギーや心理的な回復力を持ち、困難があっても努力を続けようとする状態です。

「熱意(dedication)」とは、仕事に意味や誇りを感じ、積極的に関わっている状態を指します。単に仕事をこなしているだけではなく、「この仕事には取り組む価値がある」と感じている状態に近いものです。

「没頭(absorption)」とは、仕事へ深く集中し、時間が早く過ぎるように感じたり、仕事からなかなか離れたくないほど集中したりしている状態です。

この三つを見ると、ワーク・エンゲイジメントは単なる「会社への忠誠心」ではないことが分かります。中心にあるのは、所属している会社そのものよりも、仕事をしているときの心理的な状態です。

また、ワーク・エンゲイジメントは、一時的にテンションが上がっている状態とも異なります。ある程度持続する仕事に関連した心理状態として研究されており、「今日は気分が良いから仕事が楽しい」という短期的な感情だけを意味するものではありません。

 

モチベーションとエンゲージメントの違い

前の記事で扱ったモチベーションとエンゲージメントは、非常に近い概念に見えます。実際、両者は深く関係していますが、同じものではありません。

モチベーションは、人がなぜ行動を始め、何に向かって行動し、それをなぜ続けるのかという「動機づけ」の過程を扱います。給与を得たい、成長したい、面白いから続けたい、誰かの役に立ちたいなど、行動を生み出す理由や方向性に注目します。

一方、ワーク・エンゲイジメントでは、その人が仕事をしているときに、どの程度活力や熱意、没頭を感じているのかが中心になります。

例えば、昇進のために非常に強く動機づけられている人がいたとします。その人は目標達成のために懸命に働いているかもしれません。しかし、仕事そのものには意味を感じず、疲弊しながら成果だけを追っているのであれば、強いモチベーションが存在していても、ワーク・エンゲイジメントが同じように高いとは限りません。

反対に、自分の仕事に価値を感じ、集中して取り組んでいる人には、仕事そのものに関係する動機づけが存在している可能性があります。

したがって、モチベーションを「人を行動へ向かわせる力や過程」と考えるなら、ワーク・エンゲイジメントは「仕事へ積極的に関わっているときの心理状態」に焦点を当てた概念だと整理できます。

 

従業員満足度とエンゲージメントの違い

エンゲージメントと混同されやすいもう一つの概念が「従業員満足度」です。仕事や給与、人間関係、労働環境などに対して、従業員がどの程度満足しているのかを見る考え方です。

満足していることと、積極的に仕事へ関わっていることは必ずしも同じではありません。

例えば、給与に大きな不満がなく、残業も少なく、人間関係も穏やかな職場で働いている人がいるとします。その人は職場環境に十分満足しているかもしれません。しかし、仕事そのものには特別な熱意を持っておらず、必要な業務だけを安定してこなしている可能性もあります。

逆に、仕事へ強い熱意を持っている人が、給与や設備など特定の労働条件には不満を感じていることもあります。

つまり、満足度は「この仕事や職場をどの程度好ましく評価しているか」という側面が強いのに対して、ワーク・エンゲイジメントでは、仕事へどの程度エネルギーを注ぎ、熱意を持って関与しているのかが重視されます。

企業にとって従業員満足度を高めることは重要ですが、「不満がない状態」と「仕事へ積極的に関わっている状態」を同じものとして扱わないことが大切です。

 

組織コミットメントとは何が違うのか

さらに近い概念として、「組織コミットメント(organizational commitment)」があります。これは、従業員と所属組織との心理的な結びつきを扱う概念です。

組織コミットメント研究では、ジョン・マイヤーとナタリー・アレンによる三要素モデルがよく知られています。このモデルでは、組織に対するコミットメントを「情緒的コミットメント」「継続的コミットメント」「規範的コミットメント」に分けています。

情緒的コミットメントは、その組織に愛着や一体感を持ち、「ここにいたい」と感じる状態です。継続的コミットメントは、退職することで失うものや負担が大きいため「ここにいる必要がある」と感じる状態です。規範的コミットメントは、義務感などから「ここにいるべきだ」と感じる状態として説明されます。

ここでも、仕事と組織を区別することが重要です。自分の仕事には強い熱意を持っていても、所属企業にはそれほど愛着を感じていない人がいるかもしれません。反対に、会社や仲間には強い愛着を持っていても、現在担当している仕事にはあまり没頭できていない場合もあります。

ワーク・エンゲイジメントは主として「仕事との関係」を扱い、組織コミットメントは「所属組織との関係」を扱います。ビジネスで使われる「従業員エンゲージメント」には、この両方に近い要素が含まれることがあるため、言葉の意味が曖昧になりやすいのです。

 

何がワーク・エンゲイジメントに関係するのか

ワーク・エンゲイジメントの研究では、「仕事の要求度―資源モデル(Job Demands-Resources model)」が重要な枠組みの一つとなっています。

仕事には、人へ負荷をかけるさまざまな「仕事の要求度」があります。仕事量、時間的なプレッシャー、感情的な負担、複雑な課題などです。要求度が高い状態が続き、十分な回復ができなければ、疲労や消耗につながる可能性があります。

一方、仕事には「仕事の資源」もあります。仕事を進めるうえで役立ち、負担を軽減したり、成長や目標達成を支えたりする要素です。例えば、上司や同僚からの支援、適切なフィードバック、仕事上の裁量、学習機会、役割の明確さなどが挙げられます。

仕事の資源が豊富にあることは、ワーク・エンゲイジメントと関連することが多くの研究で示されています。自分で考えて仕事を進められる、必要な支援を得られる、自分の仕事がどのような意味を持つのか理解できる、能力を発揮しながら成長できるといった環境は、仕事への積極的な関与を支える可能性があります。

また、自己効力感や楽観性など、個人が持つ心理的な資源も関係します。ただし、ここでもエンゲージメントを本人だけの問題として考えないことが重要です。仕事の設計やマネジメント、組織環境によって、人が利用できる資源は大きく変わるからです。

 

エンゲージメントとバーンアウトの関係

ワーク・エンゲイジメントについて考えるとき、「バーンアウト(燃え尽き)」との関係も重要です。

バーンアウトは、仕事上の慢性的なストレスと関連する状態として研究されてきました。世界保健機関(WHO)のICD-11では、適切に管理されなかった慢性的な職場ストレスから生じる職業上の現象として位置づけられています。

ワーク・エンゲイジメントとバーンアウトは、互いに関連しながらも、単純に一つの尺度の両端として扱えるわけではありません。エンゲージメントが低いからといって、必ずバーンアウトしているとは限らないからです。

仕事に特別な熱意を感じていなくても、穏やかに働いている人はいます。一方で、仕事へ強く関わっていた人が、高い負荷や長時間労働、回復不足などによって消耗していくこともあります。

そのため、「エンゲージメントを高める」という言葉が、単純に「もっと仕事へ熱中してもらう」という意味になってしまうと注意が必要です。人が高いエネルギーを持って働き続けるためには、休息や回復、適切な仕事量、支援なども必要になります。

仕事への積極的な関与と、際限なく働くことは同じではありません。

 

企業がエンゲージメントを測る理由

多くの企業では、従業員へのアンケートを通じてエンゲージメントを測定しています。背景には、従業員の心理状態や組織との関係が、離職、仕事のパフォーマンス、欠勤、顧客対応などと関連する可能性があることがあります。

ただし、エンゲージメントスコアは、それ自体が組織の目的ではありません。数値を高くすることだけを目標にすると、本来何を知るための調査だったのかが見えなくなることがあります。

例えば、「会社を友人に勧めたいと思いますか」という質問への点数が低かったとしても、その原因は一つではありません。給与への不満なのか、経営への不信なのか、仕事内容の問題なのか、上司との関係なのかによって、必要な対応は異なります。

また、調査を行っても、その結果について何も変化が起きなければ、「回答しても意味がない」と従業員が感じる可能性があります。測定することと、組織を改善することは別の行為です。

エンゲージメント調査は、人を評価するための成績表というより、仕事や組織のどこに問題や強みがあるのかを考えるための一つの観測手段として扱う方が、その意味を理解しやすいでしょう。

 

エンゲージメントは「高めさせる」ものなのか

企業では「社員のエンゲージメントを高める」という表現がよく使われます。しかし、人の心理状態を直接操作することはできません。

会社が「もっと会社を好きになりなさい」「もっと仕事に熱意を持ちなさい」と要求しても、それによって本当の意味でのエンゲージメントが生まれるわけではありません。むしろ、会社への共感や熱意まで従業員へ要求するようになれば、別の圧力になる可能性があります。

組織ができるのは、エンゲージメントが生まれやすい条件を整えることです。仕事の意味を理解できること、自分の役割が明確であること、必要な裁量があること、努力に対して適切なフィードバックが得られること、成長できる機会があること、周囲から支援されることなど、仕事を取り巻く環境にはさまざまな要素があります。

ここには、モチベーションだけでなく、これまで扱ってきた心理的安全性、リーダーシップ、組織文化、人材育成、責任、権限なども関係しています。例えば、責任だけを与えて必要な権限を与えない組織では、自律的に仕事へ関わることは難しくなるでしょう。挑戦を求めながら失敗を強く罰する文化では、仕事へ積極的に関与することにも慎重になるかもしれません。

エンゲージメントは、従業員の内面だけに存在する独立したものではありません。人と仕事、人と上司、人と組織の間につくられる関係の中で変化するものとして見ることができます。

 

エンゲージメントから組織を見る

エンゲージメントという概念が興味深いのは、個人の心理と組織の構造をつなぐ位置にあることです。

仕事へ熱意を持てない人がいるとき、「本人のやる気がない」と考えることもできます。しかし、仕事の裁量がほとんどなく、目的も説明されず、成果についてフィードバックもなく、意見を伝えても何も変わらない環境であれば、その人だけに原因を求めることはできません。

反対に、働く人が仕事の意味を理解し、自分の能力を使いながら、必要な支援を得て、自分の判断で一定の範囲を動かせる環境では、仕事への関わり方が変化する可能性があります。

もちろん、どれほど良い環境を整えても、すべての人が同じ仕事へ同じ熱意を持つわけではありません。人によって興味や価値観、人生における仕事の位置づけは異なります。仕事以外の生活を重視することも、エンゲージメントが低いことと単純には同一視できません。

だからこそ、エンゲージメントを「社員をもっと働かせるための方法」と捉えるのではなく、人と仕事との関係が現在どのような状態にあるのかを見る概念として理解することが重要です。

組織の中で人は、給与だけによって働いているわけでも、本人の意欲だけによって働いているわけでもありません。仕事内容、裁量、評価、人間関係、役割、組織文化など、多くの条件の中で仕事との関係をつくっています。エンゲージメントを見ることは、その関係を理解する一つの入口になります。

 

まとめ

エンゲージメントとは、人が仕事や組織へどのように関わっているのかを考える際に使われる概念です。ただし、ビジネスで広く使われる「従業員エンゲージメント」と、学術的に研究されている「ワーク・エンゲイジメント」は必ずしも同じ意味ではありません。

ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連する肯定的で充実した心理状態として、「活力」「熱意」「没頭」という特徴から説明されます。モチベーションが行動を生み出す理由や過程を扱うのに対し、ワーク・エンゲイジメントは仕事へ積極的に関わっている心理状態に焦点を当てています。また、職場への満足を表す従業員満足度や、所属組織との心理的な結びつきを扱う組織コミットメントとも区別されます。

エンゲージメントには本人の特性だけでなく、仕事上の裁量、支援、フィードバック、成長機会、仕事量、人間関係など、仕事を取り巻く環境も関係します。そのため、「エンゲージメントが低い」という結果だけを個人の問題として扱うと、背景にある組織の条件を見落とす可能性があります。

人が仕事へどれほど関わっているかを見ることは、その人の意欲を測ることだけではありません。仕事がどのように設計され、人と組織がどのような関係をつくっているのかを見ることでもあります。エンゲージメントという概念を理解することで、組織の中で人が働くという現象を、もう少し立体的に捉えられるようになります。

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